珍しいことに自宅ではこのところ並行読みせずに「織田信長」一点だけを読んでいた。それを名残惜しく読み終えて、しばらくぶりに藤沢作品を読もうとこれを読み始めるとなんか以前読んだ気がして、読み進めていくと確かに読んだことがある。この本は7編からなっているがおかしいなと思いつつほかの作品の冒頭を読んでいくとなんとすべて読んだことがある。ついにぼけたかとベッドを抜けだして本棚まで確かめに行くと同じ本はなかった。    
 どうも織田信長を読む前にこの本を読み切っていたらしい。マァ大ボケではなかろうが、小ボケの域にはじゅうぶん達していると思う。ただ救いは自分でも驚くことだがこの作品7編の大筋はすべて記憶に残っていた。
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「木綿触れ」
 上司の理不尽で女房を手籠めにされた男がその上司に復讐する。
「小川の辺」
 嫁いだ妹の亭主が理不尽な上司を斬ってしまう。妹は亭主と一緒に脱藩するが討ち手にえらばれたのは兄だった。
「闇の穴」
 表題になっているが訳のわからん話。この7編の中で一番不出来だと思うが・・・
「閉ざされた口」
 小さな子供が殺人現場を目撃していまう。ただその子はあまりの恐怖に口がきけなくなってしまう。だがある時にその下手人と会ってしまう。その男は近所でも評判いい大店の主人だった。
「狂気」
 これも近所で悪く言う人がいない大店の主人だったが、その男には、少女をいたぶるという性癖が潜んでいた。
「荒れ野」
 若い僧は、その師の僧の妾に手を出してしまった。逆鱗に触れ僻地に飛ばされる途中に山中で道に迷ったその僧は、若い女に一宿の世話になる。が・・・その女は山姥だった。
「夜が軋む」
 木地師と一緒になったその女は、山深い山中で暮らすことになった。冬になると雪に埋もれ村里とは一切の行き来が遮断されてしまう。少ない村人との交流もほとんどなかった。そんな中唯一近所の猟師の男は何かと面倒を見てくれた。ある雪の夜その猟師は亭主が麓に降りて一人寝の女の家の前で凍死する。だがその体には大きな傷が無数にあった。そしてその後、同じように雪の夜、亭主が家の前で凍死してしまう。
 藤沢作品では珍しく(初めてである)一人称で、酒場の女が閨で行きずりの男に語る構成になっている。ユニークな作品だった。

 藤沢短編作品は、読んだばかりなのにすっかり忘れていることも多い。この7編はなぜかほとんど全部思えている。何でだろう。。。だがいつ読んだか忘れている。なんでやろ。。。。