先日久しぶりに読んだ現代小説「風よ 僕らに 海の歌を」(何度書いても覚えにくい外題だ。もうちょっとつかみのいいのにすればいいとおもうが)が、一気読みするほど面白かったので、同じジャンルで、長い間ベッドサイドに積み上げてあったこれを3月の沖縄行にお供させた。
風よ・・・と同じく実際にあった事柄を題材にしたもので、ここでは、外務省の犯罪ともいえる(というか犯罪そのものだとおもうが)南米移民を巡る悲惨さを中心に物語は進む。実際外務省は、害務省と揶揄されるようにその実態は、戦前のひどさと全く変わらないどころかますますその程度を悪化させている。隣国とのいわれなき中傷にもまともな対応ができないほか、先例主義、ことなかれ主義、先送りなどなどその官僚の権化ともいえる低レベルさに加え、外交官たちの選民思想、外交特権、使い放題の予算には、これでまともな国の国交担当部署なのかと、あきれを通り越して、強い怒りを感じる。
下巻は、ブラジル移民で親兄弟、財産全てを失った主人公が、現在の外務省に復讐を決行する。上述したが、日本の省庁の、官僚の下劣さは、旧日帝国軍のその組織図と驚くほど近似している。結構なまともな、優秀な部下がいるのにその上層部には「なぜ?」という下劣な人物がのさばっているという構図である。ホンマこの国はどないなっとるんかと嘆かわしいことだ。
巻末の宮沢和史氏の解説文が秀逸である。
長くなるが引用する。
―「ワイルド・ソウル」このタイトルを書店で見た時、何とも言えない切なさと郷愁をおぼえた。「野生なる魂」私たちが無くしてしまった言葉だ。今の日本人が金と引き換えに売りさばいてしまった言葉だ。戦争に負け、占領軍に統治され、ストックホルムシンドロームにも似た日米の関係性の中で、自らを去勢してしまうことで開き直った我々は、自衛隊を煙たがり、日の丸を揚げることに抵抗を感じ、国歌斉唱を拒み、日本人としての誇りさえも売りさばき、それによって手にした金で世界を買い、そして、今、全てを失ってしまった。私たちは、全てを失ってしまった。私たちはいったい何をしているのだろう?どこを目指しているのだろう?―
・スペイン語とポルトガル語は兄弟言語。
・ブラジルには現在140万人以上の日系人がいる。